今日のテーマは動かない手足に対して、私はどのように考え、訓練へ導くかについて書きたいと思います。
1.動かないとはどういった状態か?
脳卒中を発症すると、いわゆる麻痺という症状が現れる方が大半です。
不思議なことに片方の手足が不自由となり、全く動かない重度の症状から軽度の症状まで多岐に渡ります。
どこをやられても身体の症状が出ることがありますし、損傷の程度の大小で重症度も変わります。私たちが手足を動かすといった際は、運動に関わる運動野というところが関わってきます。
手足を動かせ!!
という司令が出ると神経を介して、その司令が運動器官(筋肉)へ伝わっていくわけです。
運動の司令を出す部分に損傷を負ってしまうと、動かすぞ!という意図とは裏腹に司令が出せなくなってしまいます。それが右の脳で起これば、左半身が不自由となりますし反対側の損傷で起これば右半身が不自由となります。
2.それは本当に麻痺だけの問題?
脳の運動野から、手足を動かす司令が出ると先程述べました。ですが手足を動かすって実はそんな単純ではないのです。
私たちが手足を動かす時って、何かしようとする時ではないですか?
つまり目的となる事があって、それを達成するために手足を動かすのが一般的ではないでしょうか。
例えば目の前にあるカップへ手を伸ばすという動きを考えてみましょう。
まずは肩が挙がり肘が曲がったり伸び、手はカップの形に合わせた構えをしているのではないでしょうか?
こんな時、脳はどうなっているかというと
まずは何かを飲みたいという欲求のもとカップへ手を伸ばそうという意図が現れます。
今までの人生で、カップに手を伸ばすことなんて何万回と繰り返してきた動きですからどうやって動かすなんて考えません。
しかし脳の中では、この位肩を上げなきゃ手が届かないとか、こんなにも肘を伸ばしたらカップから遠ざかってしまうなど
私とカップとの距離感から、肩や肘をこの位動かせば良いんだという予測が立ちます。
運動に対する予測が立つというのは、何気ない行為の中で常に起こってます。
ということは、動かないというのは運動野から司令を出せないだけの問題なのでしょうか?
そうとは言い切れません。
先述した
・意図
・予測
・見た情報と身体との距離を図るべき感覚機能
このような要素も身体を動かすことにとってとても大切です。
これらの要素が欠けると運動野の司令塔がやられたことに加え動かし方も分からなくなってしまうわけです…
3.動きを導くための一工夫
今のところ服薬やリハビリテーションで、構造上壊れてしまった脳を戻すことはできませんが、その他の要素を見直すことで今よりも手足を動かすことができる可能性は十分にあります。
①手足の動かし方を本当に分かってますか?
非常に多くの方が、実は身体の動かし方が分かってらっしゃらない方が多いと思います。
肩を挙げるという動きにせよ、私が動かした時とご自身で動かした時とで全然感覚が違うと耳にすることがあります。
あなたの動かしているのって本当に肩ですか…?
他者に肩を動かされた時に、本当にそれはご自身で動かした時に感じる肩と同じものでしょうか?
まずは確かめてみてください。
②動くための予測はできてますか?
不自由な半身は今までのように動かすことが難しく、今までのようにこうやって動かしたら良いんだなあという予測が今までと異なります。
不自由な身体では、改めて予測を見直さなければなりません。
先程の例で、手をカップへ伸ばすためには、肩や肘をこの位動かすんだという動きの予測を立て直します。
不自由でない身体を使い
・どこの部分(肩、肘、手など)から動いていらのか感じてみる。
・どの方向へ、どの位の距離を動いているいるかを感じてみる。
・カップの大きさに合わせた手の構えはどんな構えなのか感じてみる。
といった要素を感じてみましょう。
そして、不自由な半身ではどうやっているのかを見つめなおしてみてください。
少しずつやっていければ、今の不自由な身体に適した予測が立ってくる可能性があります。
③距離感はとれてる?
カップまでの距離を不自由でない側の手で捉えてみてください。例えば、テーブルの上に手を乗せて、目印を置きます。その目印に両手を合わせます。同じくらいの距離感になりましたか?
もし分からなければ
・肩がどの程度、脇の下または胸から離れていくか?
・肘がどの位伸びているか?
・テーブルの縁が手首のどの辺に当たっているか
そういった所も、感覚を探す目安となります。
まとめ
動かない手足に対して、私はどのように考え、訓練へ導くかについて私の意見をまとめました。
動かないからといって、無理やりするのは禁物です。
私たちが力になります。
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